その独特の手触りや質感で、今もなお多くのファンを惹きつけてやまない「和紙」。
現代では決して日常的に使われるものではなくなりましたが、それでも和紙づくりがこの世から消えることはなく、何らかの形で現代まで伝統が引き継がれています。
そもそも「和紙」と他の紙とは何が違うのでしょうか。
本記事では、和紙の歴史や魅力、製造過程から新しい活用法まで、まとめてご紹介いたします。
- [目次]
- 和紙の歴史とは?日本への伝来と本格的な紙漉き開始時期をご紹介
- 和紙の魅力とは?
- 和紙の製造過程についてご紹介
- 現代に生きる和紙の活用法とは?
- ユネスコ無形文化遺産への登録と和紙の未来について
1. 和紙の歴史とは?日本への伝来と本格的な紙漉き開始時期をご紹介
和紙のもととなる「紙」は古代中国で発展し、紀元前2世紀ごろの後漢の役人・蔡倫により集約統合され実用的な製造方法が定められた、とされています。
これが日本に入ってきたのは飛鳥時代。
「日本書紀」には、610年(推古18年)に高句麗の僧・曇徴により製紙法と墨が伝えられたと読み取れる記述があり、これが日本最古の紙に関する公式記録となります。
なお、それ以前に越前ではすでに和紙漉きが始まっていたという説もあり、本当の紙づくりの伝来時期は定かではありません。
その後100年ほど経過し、奈良時代から紙づくりの国産化がスタートしました。
「正倉院文書」によると、737年(天平9年)には、美作・出雲・播磨・美濃・越前などで本格的に紙漉きが始まったそうです。
当時は「造紙」と呼ばれていたようですが、平安時代に入ると「紙を漉く」と呼ばれるようになり、現在に至ります。
ちなみに、この「正倉院文書」には「武蔵国紙」という名前も記載されており、これが、現在も埼玉県小川町一帯で作られている「小川和紙」の起源ではないかと言われています。
2.和紙の魅力とは?
明治時代に洋紙が伝来して以降、和紙を日常生活で利活用するシーンは徐々に少なくなっていきました。
しかし、それでも和紙は私たちを魅了し続け、現代でもその製法が絶えることなく残り続けています。
それでは、その和紙の「魅力」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
一般的な和紙の大きな特徴は「洋紙と比べると格段に繊維が長いため、薄く強靭で寿命が比較的長い」ことにあると言われています。
特に伝統的な製法を用いて漉かれた和紙については、その耐久性や経年劣化に関しても十分な検証がなされており、保存性については1000年以上と言われるほど優れています。
また、のっぺりとした洋紙に比べて独特の凹凸のある和紙は、紙ごとに独自の風合いを表出しており、その芸術性に魅了される方が世界中にいます。
まさに日本を代表する文化であり、素材であり、アートであると言えるでしょう。
3. 和紙の製造過程についてご紹介
日本に伝来してから1300年の歴史をもつ和紙。
この章では。長い時間をかけて徐々に改良されてきた和紙づくりの工程を、「小川和紙」の製法を例に簡単にご紹介いたします。
※地域により和紙の製法は異なる場合があります。
3-1. 原料の刈り取り
和紙の原料は、時代と地域により「楮」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」「麻」「桑」「竹」などいくつかの種類があります。小川和紙では原材料に主に楮(こうぞ/かず)という植物を使用します。地域一帯に点在している楮畑で早春から育てた楮は、冬には高さ数mまで成長するものもあります。この楮の枝や葉を全て落とし、幹を和紙の原料として刈り取るのは毎年12月~1月ごろです。
3-2. 楮を蒸す
刈り取りした楮を束ねて蒸します。
3-3. 楮を剥ぐ
蒸した楮が熱いうちに皮を剥きます。
3-4. 削る(楮ひき、かずひき)
和紙の原料の楮の黒皮を白皮へと削る工程を、小川和紙づくりでは「かずひき」と呼んでいます。皮の一番外側は、寒さ暑さから身を守るための部分「鬼皮」、その下の緑色の部分が「あま皮」、その下が和紙づくりに必要な部分「白皮」です。
3-5. 白皮を煮る
楮の白皮をソーダ灰で2〜4時間ほど煮込みます。
3-6. 晒す
煮込んだ楮の白皮を水に晒し、アクを抜きます。
3-7. ちりとり
アク抜きの済んだ楮の皮から、さらに不要な部分を取り除きます。繊維についたちりや不良な繊維を、指先で丁寧に取り除きます。この作業を丁寧に行うことで、より白い和紙になります。もちろん全て手作業です。
3-8. 楮叩き(かずうち)
ちりとりの済んだ楮を「楮打棒・木槌」で叩きます。楮の繊維が綿のようになるまで叩きほぐしていきます。従来はもちろん手作業でしたが、現在は和紙づくりの全工程のなかで唯一機械化されているそうです。
3-9. 和紙漉き(流し漉き)
ここがいわゆる「和紙漉き」の作業になります。漉舟(紙漉き槽)に水を張り、ほぐした楮とトロロアオイの粘液を混合し、「簀桁(すげた)」で一枚一枚丁寧に漉き上げていきます。この手法は「流し漉き」と呼ばれる日本独特の製紙法であり、平安時代初期にその技術が確立したそうです。
3-10. 絞る
漉き上げた紙の水分を、ゆっくりとしぼり取ります。
3-11. 紙干し
水分をしぼりとった紙を、一枚一枚空気が入らないように「干し板」に貼って、天日干しにします。乾いたらようやく和紙が出来上がりです。
4. 現代に生きる和紙の活用法とは?
和紙は、文字を書くという紙の基本的な用途以外にも、さまざまな場面で活用されています。
例えば「強靭で耐久性が高く寿命が長い」という特徴を活かし、古文書や絵画など世界中の文化財の修復作業で和紙が使用されています。
また、その独特の風合いを活かし、表彰状、卒業証書や結婚式の招待状、高額商品のパッケージや案内状、アーティストの作品に使用されることも増えています。
特に海外のアーティストからは評価が高く、自らの作品のレベルを上げるために和紙を独自で輸入したり、訪日して和紙を直接買い付けるケースもあります。
5. ユネスコ無形文化遺産への登録と和紙の未来について
このように、1300年以上も独自の伝統を絶やすことなく引き継がれてきた和紙づくりの技術ですが、2014年に石州半紙・本美濃紙・細川紙の3紙が「和紙 日本の手漉き和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。
石州半紙は島根県、本美濃紙は岐阜県、細川紙は埼玉県に伝わる和紙づくりの技術で、共通点は原材料に国産の楮のみを使用しているところです。
和紙の需要は明治時代の洋紙の流入とともに減少しており、特に原材料の楮の収穫量は、1965年から1975年の10年間に4分の1近くまでに激減しました。
また、手漉き和紙の生産戸数も、1962年から1976年の14年間で6分の1ほどに減少しています。
ユネスコ無形文化遺産に認定されたこともあり、最近では減少幅は少なくなっているとはいえ、貴重な伝統技術が途絶える危機にあることは変わりありません。
文字を書きつける以外での新たな和紙の需要、さらには原材料である楮の和紙づくり以外での需要を新たに掘り起こすことが、今求められています。
6. まとめ
本記事では、和紙の歴史や特徴、魅力や製造工程などについてまとめて紹介いたしました。
国際機関や海外アーティストからも高評価を得られるほど魅力いっぱいの和紙の世界ですが、前項でも記載したとおり、和紙自体はもちろんその原材料である楮を現代のライフスタイルとつなぎ新たな需要を喚起することが、和紙というものを後世に伝えるための喫緊の課題といえます。
私たちが運営する埼玉県小川町発の食品ブランド「OGAWA楮寿園〈おがわこうじゅえん〉」は、小川和紙の原材料として地域一帯で育てられている楮を食材として活用。
地域の定番土産となれるようなご当地スイーツギフトを目指しています。
食材としての楮の活用に成功すれば、和紙づくりという地域の伝統が途絶えるという事態を食い止められるかもしれません。
栄養満点の和紙の原料・楮を使用したスイーツギフト「OGAWA楮寿園〈おがわこうじゅえん〉」をぜひご賞味ください。